近代大阪の日本画が勢ぞろいする史上初の展覧会
新型コロナウイルス感染症の変異株により、日々増加傾向にある感染者数に伴いまして、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。
現在、新しい生活様式のもと検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。
そのような経緯から大阪中之島美術館にて開催中の『大阪の日本画』をご紹介します。
中世より流通・商業に利する場所として栄え、堂島川と土佐堀川に挟まれた中洲である大阪中之島に、昨年2月にオープンし、今年開館1周年を迎える大阪中之島美術館。
オフィスビルが立ち並ぶなかで異彩を放つ黒い箱、館内に入ると吹き抜けの大空間にふたつの長いエスカレーターがクロスする流動的な直線美が来館者を出迎えてくれます。
建築家・遠藤克彦さんによる黒い外壁という斬新なアイデアが、当時は関係者をとても驚かせましたが、今ではすっかり周囲の環境に馴染み、中之島の人気スポットになっています。
館内1階と2階のパッサージュは自由に通行でき、パブリックなスペースとして機能しています。また、外周や芝生広場は休館中も立ち入り可能で訪れる人たちの憩いの場になっています。
そんな大阪中之島美術館にて開幕した『大阪の日本画』。
開館一周年を迎えた大阪中之島美術館で開催される本展覧会は、明治から昭和に至る近代大阪の日本画に光をあて、60名を超える画家による約150点の作品を展示し、近代大阪の日本画が勢ぞろいする史上初の展覧会です。
大正から昭和前期にかけて画壇としての活動が隆盛を極め、人物画の北野恒富(きたの・つねとみ)、女性画家の活躍の道を拓いた島成園(しま・せいえん)、大阪の文化をユーモラスに描いた菅楯彦(すが・たてひこ)、新しい南画を主導した矢野橋村(やの・きょうそん)などの多くの画家により、個性豊かな作品を生み出されました。
東京や京都とは異なる文化圏を形成した大阪の街で生まれた珠玉の作品たちが展示室を賑やかに彩り、その作品が生まれた背景にも目を向けることで、個々の作品の魅力や画壇のあり方をより深く知るとともに、今につながる大阪の街の文化を浮き彫りにしていきます。
大阪は商工業都市として発展を続けるとともに、東京や京都とは異なる文化圏を形成し、個性的で優れた芸術文化を育んできました。
江戸時代からの流れを汲んだ近代大阪の美術は、市民文化に支えられ、伝統にとらわれない、自由闊達な表現が多彩かつ大きく花開いたといえます。
会場では、そんな今につながる大阪の街の文化を浮き彫りにする、近代大阪の日本画に光をあてた全6章で構成されています。
特に筆者が注目したのは、第1章 ひとを描くー北野恒富(きたの・つねとみ)で展示されている北野恒富による《鏡の前》(1915年)後期展示や《暖か》(1915年)後期展示から、第6章 新しい表現の探求と女性画家の飛躍で展示されている吉岡美枝による《店頭の初夏》(1939年)まで、約25年の月日を経て美人画に描かれている女性に大きな変化が見られたことです。
男性目線と女性目線で女性の捉え方に差はあると思いますが、和装から洋装へと服装の変化も然ることながら、日本髪からパーマへと変化したヘアスタイル、儚さや妖艶さが漂う様子から芯の強さが感じられる風貌へと変わっています。
また、《店頭の初夏》に描かれているようにワンピースなどの洋服が普及している背景には、大阪は外国人の姿が珍しくなかった神戸が近く、繊維産業が盛んな商業都市で、洋服の流行もいち早く取り入れていく傾向があったからだそうです。
近代大阪の日本画が勢ぞろいする史上初の展覧会である『大阪の日本画』。
開館1周年を迎えた大阪中之島美術館で開催される初の日本画展であり、大阪の新しいランドマークとなった美術館にこの地で育まれた珠玉の作品たちが再集結します。
東京や京都とは異なる文化圏を形成し、個性的で優れた芸術文化を育んできた大阪で、そんな今につながる大阪の街の文化を浮き彫りにする、60名を超える画家による約150点の作品を鑑賞しに足を運んでみてはいかがでしょうか。
取材・撮影・文:新麻記子
【情報】
『大阪の日本画』
会期:2023年1月21日(土)〜4月2日(日) 会期中に展示替えあり
会場:大阪中之島美術館 4階展示室
住所:大阪市北区中之島4-3-1
開館時間:10:00〜17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜日(3月20日(月)は開館)
観覧料:一般 1,700円(1,500円)、高校・大学生 1,000円(800円)、小・中学生以下 無料
※( )内は20名以上の団体料金
※障がい者手帳などの所持者(介護者1名含む)は当日料金の半額(要証明、来館当日に2階チケットカウンターにて申し出のこと)
※一般以外の料金での利用者は証明できるものを当日に提示
※作品の展示および期間は変更となる場合あり
HP:https://nakka-art.jp/exhibition-post/osaka-nihonga-2022/