
アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。
今回は、芸術とデザインが交差する場所で「自由」を再発見できる、国立新美術館で開催中の「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」をご紹介します。
本展覧会について

東京・六本木の国立新美術館で開幕した「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」。本展は、パリ国立ピカソ美術館のコレクションを中心に約80点を紹介すると同時に、英国を代表するファッションデザイナー、ポール・スミスが会場デザインを手掛けた国際巡回展です。
一見すると、20世紀美術の巨匠パブロ・ピカソと、現代ファッション界を代表するデザイナーであるポール・スミスとの組み合わせは意外に思えるかもしれませんが、この二人が「遊び心」「自由な発想」「既成概念への反抗」という共通項によって深く結びついていることが分ることでしょう。
本展覧会は単なるピカソ回顧展でも、デザイナーによる演出展でもなく、芸術とデザインの幸福な対話の中で、芸術を「鑑賞するもの」から「体験するもの」へと変えていく、新しい美術展なのです。
ピカソの自由な精神が視覚化される空間

本展の最大の特徴は、ポール・スミスによる空間演出です。
一般的な美術展では、白い壁と均一な照明によって作品を中立的に見せることが多いですが、本展覧会では、鮮やかな色彩、ストライプ柄、壁紙など、ポール・スミスらしいユーモアに満ちた空間が広がっています。
会場に足を踏み入れるとまるでピカソの頭の中を探検する迷宮のようです。色彩豊かな壁面、絶妙に配置された作品やポール・スミス氏によるイラスト、遊び心ある演出で、それらは作品を邪魔するどころか、ピカソの自由な精神を現代に蘇らせています。
ピカソの人生を緩やかな時系列で辿る

展示は厳密な年代順ではなく、緩やかな流れの中で構成されており、鑑賞者は教科書的な「青の時代」「キュビスム」「新古典主義」といった区分に縛られることなく、一人の芸術家の人生を自然に追体験できます。
20世紀最大の芸術家と称されるピカソの創作人生は一直線ではなく、写実から始まり、悲しみ、愛情、革命、遊び、そして晩年の自由な表現へと変化しつづけることこそが、ピカソという芸術家の本質だと言えるしょう。
本展覧会では、若き日の「青の時代」から晩年までの創作の変遷を辿りながら、生涯を通じて失敗を恐れず、完成を拒み、変化しつづけ、一つのスタイルに安住せず「変わり続ける天才」の姿を丁寧に浮かび上がらせています。
最後に

20世紀最大の芸術家パブロ・ピカソと、英国を代表するファッションデザイナー、ポール・スミス。
一見すると両者の間には時代もジャンルも大きな隔たりがあるように見えることでしょう。しかし、展示空間を歩き終えたとき、その認識は大きく変わると思います。
両者を結び付けているのは、単なる色彩感覚やユーモアではありません。既成概念を疑い、自由に世界を見つめ直し、遊び心によって創造を更新し続ける精神です。
本展覧会は、単なるピカソ展でもなければ、ファッションブランドによる演出展でもなく、そこには時間を超えて交わる二人のクリエイターの対話が存在しており、その対話は現代を生きる私たちに「創造するとは何か」という問いを投げかけてくれます。
情報
「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」
会期:2026年6月10日(水)~9月21日(月・祝)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
休館:毎週火曜日 ※8月11日(火・祝)は開館、8月12日(水)は休館
時間:10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで) ※入場は閉館30分前まで
ホームページ:https://art.nikkei.com/picasso_ps26/