【東京都庭園美術館】戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見

アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。

困難な状況下においても美術館・博物館ではさまざまな企画や対策をおこなっていることから、全てのアートシーンに対してこれからも変わらず応援していくべく、アイティーエルも継続して情報を発信していきたいと思います。

今回は、東京都庭園美術館にて開催中の「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」(会期:3月8日(土)から5月18日(日))をご紹介します。

本展覧会について

展示風景より

1945年、第二次世界大戦後にドイツは東西に分断されました。1955年、​西ドイツではバウハウスの理念を受け継ぐウルム造形大学が設立され、デザイン教育と実践が発展しました。デザインの理論と実践を発展させ、デザイン教育の分野で大きな足跡を残しました。​経済復興とともに、グラフィックデザインは商業広告や文化イベントの重要な要素となり、その独自のスタイルが形成されました。

本展では、第二次世界大戦後の西ドイツにおけるグラフィックデザインの発展と、そのモダニズムの特徴を紹介しています。

会場では、デュッセルドルフ在住のデザイナーであるイェンス・ミュラー氏とカタリーナ・ズセック氏が収集した「A5コレクション デュッセルドルフ」が所有する戦後西ドイツのグラフィックデザイン資料の中から、幾何学的抽象、イラストレーション、タイポグラフィ、写真の観点から選ばれたポスターをはじめ、冊子や雑誌などの関連資料も含めて約125点の多彩な作品が展示されています。

​これらの作品は、日本では初めて公開されるものであり、戦後西ドイツのデザインの多様性と革新性を示しています。

本展覧会の見どころ

展示風景より

戦後西ドイツのグラフィックデザインは、モダニズムの理念を基盤にしながらも、独自の表現方法を追求していました。

会場での展示作品からは、デザインが単なる視覚的な装飾にとどまらず、社会的・文化的なメッセージを伝える重要な手段であることが伝わってきます。

​特に、映画ポスターやイベント告知ポスターなどは、その時代の社会情勢や文化的背景を反映しており、デザインの持つ力を再認識させられました。

本展覧会を読み解く4つのカテゴリー

展示風景より

展示は以下の4つのカテゴリーに分かれています。

  • 幾何学的抽象:​シンプルな形状と色彩を用いたデザインで、視覚的なインパクトを追求しています。​
  • イラストレーション:​手描きのイラストや図像を活用し、温かみや人間味を感じさせる作品群です。​
  • 写真:​写真を主要な要素としたデザインで、リアリズムやドキュメンタリー性を強調しています。​
  • タイポグラフィ:​文字の形状や配置に焦点を当て、視覚的な美しさと機能性を追求した作品です。​

本展覧会の注目展示作品

展示風景より

ハンス・ヒルマン《映画「七人の侍」》1962年:​黒澤明監督の名作を題材にしたポスターで、シンプルながらも力強い表現が印象的です。​
ミヒャエル・エンゲルマン《T2》1963年:​抽象的な形状と鮮やかな色彩が特徴的なポスターで、視覚的な刺激を与えます。​
ディーター・フォン・アンドリアーン《展覧会「ドイツ交通展 ミュンヘン 1953」》1953年:​交通機関の重要性を伝えるためのデザインで、情報伝達と美的要素が融合しています。

最後に

展示風景より

西ドイツのグラフィックには、戦禍による傷跡の残る同地において、モダニズムを受け継ぎつつも、新たな時代を切り拓くべく、前進する歩みを止めずに発信し続けた、デザイナーたちのエネルギーと情熱がこめられています。

「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」は、戦後の復興期におけるデザインの役割と、その革新性を深く理解するための貴重な機会です。

​デザイン愛好家のみならず、歴史や文化に興味のある方にもおすすめです。

【情報】
戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見
会期:​2025年3月8日(土)~5月18日(日)​
会場:​東京都庭園美術館(本館+新館)​
開館時間:​10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)​
休館日:​月曜日(5月5日は開館)、5月7日(水)
観覧料:​一般1,400円、大学生1,120円、中・高校生700円、65歳以上700円​
ホームページ:https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/250308-0518_backtomodern/