【東京国立近代美術館】『大竹伸朗展』

大竹伸朗の40年以上におよぶ創作活動を体感する大回顧展!

展示風景_会場内

新型コロナウイルス感染症の変異株により、日々増加傾向にある感染者数に伴いまして、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

現在、新しい生活様式のもと検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から東京国立近代美術館にて開催中の『大竹伸朗展』をご紹介します。

会場入口

本展覧会は、2006年に東京都現代美術館で開催された「全景 1955-2006」以来となる大規模な回顧展です。

1982年の大竹伸朗の初個展から40周年となる今年、半世紀近くに及ぶ創作活動の全容を一挙に紹介し、国際展に出品した作品を含むおよそ500点を7つのテーマに基づいて構成しています。

あらゆる素材、あらゆるイメージ、あらゆる方法…大竹が「既にそこにあるもの」と呼ぶテーマのもとに半世紀近く継続してきた制作の軌跡を辿るとともに、時代順にこだわることなく作品世界に没入できる展示によって、走り続ける強烈な個性の脳内をめぐるような機会となることでしょう。

展示風景_会場内

展示風景_会場内 《東京ー京都スクラップ・イメージ》1984年 公益財団法人 福武財団

会場では、最初期の作品から近年の海外発表作品、そしてコロナ禍に制作された最新作まで、小さな手製本から巨大な小屋型のインスタレーション、作品が発する音など、およそ500点の作品による圧倒的なボリュームと密度で空間を埋め尽くします。

また、「自/他」「記憶」「時間」「移行」「夢/網膜」「層」「音」という7つのテーマに基づいて展示構成されており、作品制作年の時系列にこだわることなく、大竹伸朗の作品世界に没入し、彼の創作エネルギーを体感することができます。

展示風景_会場内 手前:《時億 /フィードバック》2015

圧倒的なボリュームと密度が楽しめる展示作品のなかでも特に注目してほしい4つの作品をあげます。

1つ目は、宇和島駅舎のリニューアルに伴い駅名の古いネオンサインを貰い受けた大竹伸朗氏が、これまでも個展開催の度に会場となる美術館にそのネオンサインを作品として設置してきました。本展会期中、東京国立近代美術館のテラスで《宇和島駅》(1997年)のネオンが輝く姿が楽しめます。

続いて2つ目は、5年に1度ドイツ・カッセルで開催される世界最大級の国際美術展である、「ドクメンタ」へ、2012年に唯一の日本人アーティストとして参加した大竹氏が出品した、ものと音が凝縮された小屋型のインスタレーション《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》です。

美術館外観_《宇和島駅》展示 《宇和島駅》1997年

展示風景_会場内 《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》2012

3つ目は2013年のヴェネチア・ビエンナーレでも話題を呼んだ、1977年の1冊目から最新作の71冊目までほぼ毎日制作しているスクラップブック。旅先で出会った人や、道で拾ったゴミ、さまざまなガラクタ、その場所のノイズや空気から触発されて作品を作るスタイルが確立していった重要作品です。

最後の4つ目は、2019年以降取り組んでいる「残景」シリーズの最新作《残景 0》(2022年)です。会場では、本作品の制作過程を追った「21世紀のBUG男 画家・大竹伸朗」(BS8K、2022年6月放送)をあわせて上映。大竹の創作の現場に初めて密着した貴重なドキュメンタリー映像です。

展示風景_会場内

取材・撮影・文:新 麻記子

【情報】
大竹伸朗展
会期: 開催中〜2023年2月5日(日)
会場: 東京国立近代美術館
開館時間 :10:00―17:00(金・土曜は10:00-20:00)
※入館は閉館の30分前まで
休館日: 月曜日[ただし2023年1月2日(月・振休)および1月9日(月・祝)は開館]、
年末年始[12月28日(水)―1 月1日(日・祝) ]、1月10日(火)
展覧会ホームページ:https://www.takeninagawa.com/ohtakeshinroten/

巡回展:愛媛県美術館 2023年5月3日(水・祝)〜7月2日(日)
富山県美術館 2023年8月5日(土)〜9月18日(月・祝)[仮]