個体差のない品質の安定性と国内メーカーへの信頼性。 
照明器具自体の使いやすさはもちろん、
気軽に相談にも応じてもらえるので、ユーザーとしてとても心強いです。

美術品の展示における、光の重要性について教えてください。

当館は、旧朝香宮邸の歴史的背景やアール・デコとの関連から、これまで主に近代美術を中心に取り扱っていたのですが、リニューアル後はホワイトキューブの新館がオープンしたこともあり、現代アートも積極的に取り上げるようになりました。
私たちは、この旧朝香宮邸の空間特性を生かして、ジャンルや時代を限定することなく、身近な生活にアートを取り入れる『装飾芸術』を、広く伝えていくことに主軸を置いています。
その為、光は文化財としての魅せ方と美術館としての機能面のバランスを保ちながら、当館を訪れた鑑賞者に空間や作品の素晴らしさを伝えるためのツールです。

実際に、光によってどのような空間作りを行ったのでしょうか。

今回、細菌、ウイルス、細胞などミクロなものをモティーフに、ガラスの特性を活かして“見えるもの”と“見えないもの”を表現している、青木美歌さんの新作インスタレーションに、調光、調色、トリミング機能を備えている「カッタースポット」を使用しました。
作品を設置しているテーブルのかたちにブレードを調整してトリミングし、天井5メートルから展示作品に向けてピンスポット照射することで、写し出された作品の影までも美しく幻想的に表現できました。
また、展示室中央の空間中に散りばめられたガラス作品は、青木さん曰くコロナウイルスを表現しているそうで、直接光を当てるところと当てないところを微調整し、見えない存在にも気づかせるようにしてほしいという希望がありました。

作品展示において光についてどのようにお考えですか?

光は一言で云うと “スパイス” のような存在です。
素材自体がよくないと美味しい料理はできませんが、どんな素材も味付け次第で変わってしまいます。いいスパイスに出会えると表現の幅が広がり、より人に感動を与えられるものだと思います。
また、作家側のクリエイティビティーやイマジネーションと、美術館側のアイディアを掛け合わせながら、互いにコミュニケーションを取って遊べますよね。私たち学芸員はライティングという絵筆を使って、作家さんの素材をどういうふうに描いていくか、その工程こそが、作品を生かしも、殺しもするし、新しい作品をつくる大切な作業だと考えています。

ITLを選ばれて、よかったことを教えてください。

最近は、作品設営において『照明の日』をつくり、照明業者にお任せすることが多くなってきました。
しかし、今回は青木さんが『照明の日』に来れないこともあり、事前にふたりでイメージを擦り合わせながら、照明器具の調光や調色も変えたり、フィルターを用いてぼかしてみたりと、自分たちだけでライティングを試してみましたが、とても扱いやすい照明器具でした。
また、メーカーが国内生産だからこそ、光や癖など器具自体の個体差がなく、品質が安定していることに加えて、万が一トラブルや故障が起きたときも、気軽に相談に応じてもらえるので、ユーザーとしてとても心強いですね。