今まで色々な照明設備を見てきましたが、ITLの照明はそのサイズの小ささに驚きました。
これだけコンパクトでありながら、照明器具が持っている性能を考えると、
イタリアでは考えられません。
美術品の展示における、光の重要性について教えてください。
照明は作品の一部なので展示において最も重要だと思っています。
自然光では柔らかな明るさで作品を照らし、それはそれとして綺麗ではあるのですが、その一方、新しいテクノロジーや照明方法を用いる照明器具からの人工光では、さまざまな作品に合わせて色々な角度から照らすことができ、“作品”だけでなく“影”も含めて映し出すことができます。
そのことから鑑賞者の知覚を向上させ、作品への理解を助ける大事な要素になっていると思います。
今回の展示では、光によってどのような空間づくりを行ったのでしょうか。
今回の展示では2種類の光が必要であると考えました。
一つ目は、大部分が真っ黒な絵画作品に対しては、白い形と対比して黒の輪郭をはっきりさせるため、アンビエンスライト(フラットな光)が適していると思います。
二つ目は、白い彫刻(Driad)については、より強調された光のコントラストを上げて、作品の一部であるかのように影をつくりだすようにしました。
本展覧会の展示作品は黒と白の世界をテーマとし、照明の重要性が認識できたと思っています。黒と白の世界ではその色自体が発するエネルギーに対して微調整が大変でした。
しかし、その微調整が作品の効果に表れていて嬉しかったです。
イタリアの照明器具との違いなど感じた点があれば教えてください。
イタリアでも美術館や博物館で使用されている照明器具において、一時期は展示作品において適切ではなかったものが多く存在していたのですが、今ではテクノロジーによって作品の表現や魅力が出てくるような効果を齎すものが重要となっています。
2000年に初めて博物館の作品に対してライティングの仕事を請け負った際には、作品に対して光を切り取るようなトリミングのシステムがなかったので、そこで使用されている照明器具との兼ね合いや課題解決を考え、初めて照明の重要性を意識することができました。
その後、アンナさんの仕事で作品を映し出す時にただ単にスポットとして光を当てるのではなく、作品と一体化させるようなライティング方法を思いつき、照明器具をセットにして販売するというようなことを考え、作品とその照明システムをコレクターにアプローチをして何件か収めたことがあります。
それから、LEDについて非常に技術が進んでおり、目を見張るものがあります。特に演色性に関しては、太陽光を〔Ra100〕とすると、〔Ra60~70〕の物が主流でしたが、最近では〔Ra90〕を上回ってきており、色に対して自然に近く、認識が変わってきています。
ITLの器具を使用した感想
今まで色々な照明設備を見てきましたが、ITLの照明はそのサイズの小ささに驚きました。
これだけコンパクトでありながら、照明器具が持っている性能を考えると、イタリアでは考えられません。
イタリアの照明器具は大きいサイズのものが多く、その歴史に目を向けると舞台照明が起源にあります。
照明器具の機能的には申し分なく、大きさにも問題はありませんでした。
しかし、ギャラリーになってくると制限がとても多くなってきます。
イタリアにも小さいサイズの照明器具はありますが、ジュエリーなどの小さな作品を照らす近距離のもので、コンパクトでありながら機能性をみるとITLには及びません。
クオリティーだけでなく明度と色温度を同時調整できるという機能に大変驚きました。
一番大切なことは、ギャラリーで作品展示を催す際に、照明がなくても展示した作品にはそれなりの存在感はありますが、そこに適切な照明があることによって、両方(作品と光)がその存在を認めることできる。
作品の表現や魅力を最大限に発揮させるには、的確な照明器具の存在が必要不可欠です。このギャラリーは2つの要素が上手く合体していると思います。